手法
カメラのピントを無限遠に合わせ、真っ暗な空間に向かってシャッターを切りました。カメラの設定は、常に同じにしてあります。それに、日付を入れてプリントしました。
コンセプト
新たな芸術のために、写真の零から始めようと思う。
真っ暗闇では、何も見えないという。では視覚情報は0なのか?いや、真っ暗な空間が、見えている。真っ暗な空間にはどこまでも何も存在しないように見えるけれど、実際にはいつもの机や扇風機が存在しているはずだ。けれども、それを感じない……。もしかしたら、真っ暗になった瞬間本当に何もなくなってしまっていたら?或いは、見通せない闇の深みから妖が今まさに迫っているのだとしたら?そして、闇とは一体なんなのだ?現実のあまりの不確かさに、僕は足が竦む。だから、撮ってみた。そして撮り続けてみた。闇を記録し、味わってみた。
真っ黒な写真が並んでいるとき、人はそれを「何も写っていない」というだろう。けれども、何も写っていない写真など存在しない。そこには、画面いっぱいの闇がある。闇に意識を向けてほしい。闇は単なる背景じゃないし、空間の詰め物でもない。闇を対象にしよう。闇の美しさを味わおう。
ここにあるのはみんな同じ写真ではないかとも思われるかも知れない。そんなことはない。みんな、撮った日が違う。考えてみてほしい、真っ暗な中にレンズを向ける夜々を。その行為を。そこに見えてくるものは何なのか、考えてみてほしい。答えは一人一人違うだろう、それでいい、作品の意味は常に鑑賞者に左右される。

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